平成06年06月07日 衆議院 法務委員会

[072]
日本共産党 正森成二
3月4日の未明ですね、午前1時ごろだそうですが、浦和市にお住まいの東京高裁の部総括判事の近藤さんのところでどかんという大きな音がして金属弾と思われるものが打ち込まれたという事件があったようであります。警察庁においで願えないかと言っておりますので、この事件の概要や捜査の状況がどうなっているか伺いたいと思います。

[073]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 谷口宏
御指摘の事件は、平成6年3月4日金曜日でございますが、午前1時ごろ、埼玉県浦和市元町所在の、当時東京高等裁判所判事の近藤和義氏、61歳宅に対しまして金属弾が発射されました。同判事宅の外壁に着弾しまして、さらに発射弾の胴体部分が隣家の物置に落下いたしまして破損しましたという事件でございます。人的被害はございません。

捜査状況でございますが、埼玉県では本件に関しまして捜査本部を設置して捜査しているところでございますが、革労協の狭間派が3月6日の日曜日に都内の報道機関に対しまして犯行声明を郵送したことから、革労協狭間派の犯行と見まして現在鋭意捜査中でございます。

[074]
日本共産党 正森成二
3月6日に犯行声明を出したのは、私どもの承知しているところでは革労協と名のるグループであったというように承知しておりますが、この事件は狭山事件と関係があるのではないか、こういうように言われております。

といいますのは、76年の9月に、二審判決で無期懲役を言い渡した東京高裁の寺尾判事が車で出勤途中に過激派と見られる5人組にバットで襲われて負傷するという事件が起こっております。

さらに90年10月には、判事として一審を担当したことのある弁護士の自宅が放火されて雨戸などが焼かれたということが報道されております。

近藤さんは東京高裁の第四刑事部の裁判官となって狭山裁判の第二次再審請求の審理を裁判長として引き継いでおられたそうですが、再審請求をめぐって最近、請求の棄却が迫っているなどとしていた過激派がいるということも言われております。

そして、近藤さんは年齢が60歳くらいだそうですが、この犯行のあったその日あるいは翌日ですか、退官をせられているのですね。まだ定年までは間があったと思うのですが、これについて東京高裁の事務局長は、「事実関係は調査中だが、近藤判事の担当していた何らかの事件の処理に関係するものだとすれば、大変遺憾だ」というように言っておりますし、当時の日本弁護士連合会の阿部会長は、「裁判を妨害し、何らかの影響を及ぼす意図があったとすれば、司法に対する悪質な挑戦で、憤りを禁じえない」という趣旨の談話を発表しております。ですから、単純な犯行ではないのではないか。特に、裁判官が退官するというようなことと何らかの因果関係があれば、これは非常に問題であるというように思いますが、重ねて警察庁もしくは裁判所の御見解を承りたいと思います。

[075]
説明員(警察庁警備局公安第三課長) 谷口宏
事件後の3月6日に都内の報道機関に対しまして革労協の革命軍軍報が郵送されました。また、革労協狭間派の機関紙「解放」、平成6年の3月15日付でございますけれども、この犯行を自認する内容の記事が掲載されました。その中を見ますと、第二次再審棄却を策謀せんとすることに対しての革命的鉄槌である云々というふうな内容が書かれておりまして、狭山闘争に関連しましたゲリラ事件と見て鋭意捜査中でございます。

[076]
最高裁判所長官代理者(最高裁判所人事局長 堀籠幸男
近藤判事は東京高裁の長官代行を約2年近くにわたってやっておられた方でございまして、かねてから勇退したいという意向を示しておられたわけでございまして、その発令が本年の3月4日になったという関係でございます。

私どもといたしましては、狭山事件を担当していたとか金属弾が自宅に撃ち込まれたということを契機として退官したものではないのではないかというふうに考えているところでございます。

[077]
日本共産党 正森成二
事前にもうおやめになるということであれば、この事件があったからおやめになったということは、おっしゃるとおりないかもしれませんが、逆に言えば、犯行を行った者が、3月4日にやめるということを知っておって、それで犯行を行ったという可能性がますます強くなると思うのですね。そういう意味では、警察庁になるのか検察庁になるのかわかりませんが、やはりしかるべき捜査をしていただく必要があるというように思います。

法務大臣がおられますので、警察の捜査がある程度熟せば検察庁にも上がってくるわけですが、政治家としてでも結構ですから、御感想がございましたら一言承って、時間が大体なくなりましたので、終わらせていただきたいと思います。

[078]
法務大臣 中井洽
御質問は承っております。

先生のお話の御趣旨と違うかもしれませんが、いやしくも裁判官あるいは検察官が暴力等によっておどかされる、このようなことがあっては断じてならないと考えております。